購買発注変更、照会を実行すると、過去に入力した発注伝票の内容が初期表示されますが、必ずしも直近に保存した発注伝票が表示されるわけではないようです。では、初期表示される発注伝票はどのように決定されているのでしょうか。今回は、発注伝票の初期表示の仕組みについて解説します。
SAP の画面トランザクションは、画面項目に指定されたパラメーター ID ごとに直近に処理した値が SAP メモリーに格納され、以降に実行した画面トランザクションで同じパラメーター ID を持つ項目に初期表示される仕組みになっています。しかし、発注登録(Tr-Cd: ME21N)、発注変更(Tr-Cd: ME22N)、発注照会(Tr-Cd: ME23N)の3つのトランザクションは、"Enjoy" と呼ばれる R/3 バージョン 4.6 から実装された新しい設計の画面トランザクションで、従来の画面トランザクションとは初期表示の仕組みが異なります。実際にトランザクションを実行しながら、発注 Enjoy 画面の初期表示の仕組みを説明してみたいと思います。
まず、購買発注登録(Tr-Cd: ME21N)で発注伝票を保存します。この例では、発注伝票番号 4500000049 で保存されています。
伝票が保存されると、入力した値がいったんすべてクリアされます。
続いて、購買発注変更を実行します。発注登録画面から発注変更画面に移動するには、画面上の前画面(横矢印)、終了(上矢印)、中止(バツ印)のいずれかのボタンを押して発注登録画面を閉じて、SAP メニューから発注変更画面に入るか、
発注変更のトランザクションコード(Tr-Cd: ME22N)を入力してダイレクトに発注変更画面に入る2通りの方法があります。
前画面、終了、中止ボタンのいずれかのボタンを押して発注登録画面を閉じると、ESDUS「在庫/購買管理:動的ユーザ設定」というテーブルにユーザー名と保存した発注伝票番号が更新されます。
SAP メニューから発注変更画面に入ると、テーブル ESUDU に更新された発注伝票番号の発注データが初期表示されます。この例では、直前に登録した発注伝票番号 4500000049 のデータが初期表示されています。
メニュー「購買発注」→「他購買発注」を選択して、別の発注伝票 4500000045 のデータを呼び出します。
発注データの表示が切り替わりました。
次に、発注データを変更せずに、画面上のボタンを押して発注変更画面を閉じてみます。
伝票保存の有無に関係なく、テーブル ESDUS に直近に表示した発注データの伝票番号(この例では、4500000045)が更新されます。
SAP メニューからもう一度発注変更画面に入ると、テーブル ESDUS に更新された 4500000045 の発注データが初期表示されます。
では、もう一度メニュー「他購買発注」を選択して最初に登録した発注伝票 4500000049 のデータを呼び出します。
発注データの表示が切り替わりました。
今度は、トランザクションコード ME22N を指定して、発注変更画面に入り直します。
すると、直近に表示した 4500000049 ではなく、その前に表示した 4500000045 の発注データが初期表示されました。
テーブル ESDUS を照会してみると、直近に表示した発注番号 4500000049 が更新されないで 4500000045 のままになっています。
つまり、発注 "Enjoy" 画面トランザクションでは、画面上の全画面、終了、中止のボタンのいずれかを押して画面を終了した場合に限って、データの保存有無に関わらず直近に表示していた発注伝票番号がテーブル ESDUS に記憶され、次の画面トランザクションでその発注データが初期表示される仕組みになっているのです。
SAP の操作に慣れてくると、SAP メニューからではなくトランザクションコードを入力して次の画面トランザクションを実行しがちですが、そのようなオペレーションを発注 "Enjoy" 画面で行うと、直近に処理した発注伝票番号が記憶されず、発注変更や照会画面を開くと、見慣れない過去の発注データが初期表示されて、思わぬ入力ミスをしてしまう可能性があります。発注 "Enjoy" 画面トランザクションの仕組みを理解した上で、適切な画面操作を行ってください。